NITSニュース第165号:【講師コラム】「GIGAスクール構想:1人1台端末活用の普及の考え方」

2021/3/5号のNITSのメールマガジンに掲載されました

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2.講師コラム「GIGAスクール構想:1人1台端末活用の普及の考え方」
東京学芸大学 准教授 高橋 純

いよいよGIGAスクール環境が整った学校が多くなってきました。
1年前の文部科学省の調査によれば、都道府県別の教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数は1.8~6.6人/台と大きな差がありました。
この差がなくなりますので、長年この分野に取り組んできた者として、とてもわくわくしています。

次は、活用の差を縮小していく必要があります。
しかし、何年もかけ、ICT環境や制度を整え、教員や子供のスキルを磨き、徐々に経験を積み重ねてきた地域と、行わなかった地域に大きな活用の差があるのは当然です。
一つ一つ、丁寧に取り組んでいければと思います。

初期の基盤として、
・コンピュータがある環境での児童生徒の学習に向かう姿勢づくり
・学校や授業での約束づくり
・情報モラルや情報セキュリティに関する学習
・キーボードやクラウドなどのICT操作スキルの習得
・情報の収集・整理・分析・まとめ・表現などの情報活用スキルの習得
など、管理や保守だけではなく、学校体制で取り組んでいくことは多岐に及びます。
経験値やノウハウに、大きな地域差がありますので、学校の実態に応じて進めていく必要があるでしょう。

さらに、実際の活用となると、文部科学省のStuDX Style(スタディーエックス スタイル)
がとても参考になるでしょう。
https://oetc.jp/ict/studxstyle/

経験不足であるうちは、学力向上や授業改善以前に、便利で楽だからICTを活用して、慣れていくことが大事だと思います。

文部科学省の担当者の講演スライドに「GIGAスクール:全く新しいICT環境」という見出しのついたものがあります。
そう「全く新しい」のです。
「クラウド」を活用することが新しいのです。
クラウドを活用する事を前提に、安価なコンピュータが整備されていますので、これまでの活用イメージと全く発想が異なることが多くあります。

もう進化のしようがないと思っていたワープロですら、クラウド型になり、活用イメージが変化し、驚きと新鮮さを覚えます。
私自身もクラウド活用が始まってから研究スピードが上がりました。
大きな変化ですので、ある意味では、これから取り組む地域にチャンスがあります。
これまでの蓄積がある地域は、いったん立ち止まってクラウド活用のイメージをしっかりと掴んで、必要であれば従来の実践ノウハウを見直す必要があります。

企業など、世界的にクラウド活用が始まっています。
GIGAスクール構想により、ほとんどの地域で汎用のクラウド活用が可能な環境が整備されました。
子供用ソフトや従来型の授業に特化したソフトの活用も効果的ですが、まずは子供たちが卒業しても、学んだノウハウが役立ちやすい汎用のクラウドを活用してみてはいかがでしょうか。

このようになりますと授業以前に、我々大人がクラウドを業務レベルで使ってみないと分かりません。
したがって、
・試しに、使ってみる
・良かったら、続けてみる
・駄目だと思ったら、やめてみる
これくらい気楽な気持ちで、どんどん業務から活用している地域が成功しつつあるように思います。
そして、現場の先生たちの「創意工夫」が認められるかがポイントだと思います。
本当に先生方の創意工夫には熱いものを感じます。
1人1台端末活用の小さなアイディアがどんどん大きくなって、教員研修や職員会議の効率化から始まり、対話的であるとか、協働的な授業への考え方を大きく変えた先生たちを目の当たりにしています。

一方で、旧来の活用法や運用法にとらわれて、クラウドの優れた特徴を次々と利用禁止にしている地域もあります。
先生方のわくわく感すらも、どんどんしぼんでいます。
アイディアは現場にあります。
「全く新しい」のですから、技術に詳しいだけで、充分に活用したことのない人に、将来の展望までを見通せるわけがありません。

ICT活用の普及とは、ICT技術に堪能である人が起こすのではなく、ICTに慣れた人が起こすのだと痛感しています。
車であれば、技術に堪能でなくても、多くの人が日常的に上手に活用します。
むしろ技術に堪能な方が乗っている車をみれば、普段使いにはちょっと…、と思うこともあるでしょう。
車と同様に、ICTに堪能な方々のアドバイスがこうしたことになっていないか、バランスに気をつけていく必要があるでしょう。